建設現場や工事現場で活躍する大型機械。
その中でも特に目立つのが、大きなアームを持ち、土を掘ったり物を持ち上げたりする機械です。
この機械、皆さんは何と呼んでいますか?
「ショベルカー」?それとも「パワーショベル」?はたまた「ユンボ」?
実は、これらはすべて同じ機械を指す言葉なのです。
今回は、この多彩な呼び名を持つ建設機械について、その違いや特徴、さらには「バックホー」という呼び名も含めて、詳しく見ていきましょう。
建設現場の主役:油圧ショベルとは
油圧ショベルの基本
まず、これらの呼び名の元となっている機械、「油圧ショベル」について説明しましょう。
油圧ショベルは、その名の通り油圧を利用して動く建設機械です。
大きなアームの先にバケットと呼ばれるスコップのような部分がついており、これを使って土を掘ったり、物を持ち上げたりします。
建設現場や解体現場、道路工事など、様々な場所で活躍する油圧ショベルは、現代の建設業には欠かせない存在となっています。
その多機能性と効率の良さから、小規模な庭の造成から大規模な土木工事まで、幅広い用途で使用されています。
多様な呼び名の由来
では、なぜこの機械にはこんなにも多くの呼び名があるのでしょうか。
それぞれの呼び名には、興味深い由来があります。
ショベルカー
「ショベルカー」は、最も一般的な呼び名の一つです。「ショベル(シャベル)」は英語で「スコップ」を意味し、その形状や機能から、スコップを備えた車両という意味でこの名前がついたと考えられます。メディアでもよく使われる呼び名で、一般の方々にも馴染みやすい表現です。
パワーショベル
「パワーショベル」という呼び名は、日本の建設機械メーカー、コマツが自社の製品につけた名前が広まったものです。
力強く土を掘る様子から、「パワー(力)」と「ショベル(スコップ)」を組み合わせた呼び名となりました。
現在では、特定のメーカーに限らず、油圧ショベル全般を指す言葉として使われています。
ユンボ
「ユンボ」という呼び名は、少し変わった由来を持っています。
これは、フランスの建設機械メーカー、シカム社の油圧ショベルのブランド名だったのです。
1961年に、日本の三菱重工業(当時の新三菱重工業)がシカム社と提携し、その油圧ショベルを「ユンボ」という名前で日本に導入しました。
この名前が非常に印象的だったらしく、瞬く間に日本中に広まり、油圧ショベルの代名詞のようになりました。
現在では「ユンボ」は商標登録されていますが、一般名詞化して広く使われています。
特に関西地方では、油圧ショベルのことを「ユンボ」と呼ぶことが多いようです。
1.2.4 バックホー
「バックホー」は、少し専門的な呼び名です。英語の「backhoe」がそのまま日本語になったもので、「back(後ろ)」と「hoe(鍬)」を組み合わせた言葉です。
これは、機械のオペレーター(操縦者)から見て、掘る部分が後ろ側にあることから来ています。
バックホーは、特にバケット(スコップ部分)がオペレーター側を向いている形式の油圧ショベルを指します。
この形式は下方向への掘削に適しており、溝掘りや基礎工事などで重宝されます。
多機能な油圧ショベルの世界
様々な作業と適した呼び名
油圧ショベルは非常に多機能な機械で、様々な作業に対応できます。
その作業内容によって、使われる呼び名も少し変わってきます。
ここでは、代表的な作業と、そこで使われやすい呼び名を見ていきましょう。
ユンボの活躍シーン
– 基礎掘り:建物を建てる際の基礎となる大きな穴を掘る作業です。ユンボという呼び名は、この大規模な掘削作業でよく使われます。
– 土砂の積み込み:掘った土をダンプカーに積む作業も、ユンボの得意分野です。
– 造成工事:新しく土地を開発する際の地形を整える作業にも、ユンボが活躍します。
バックホーの特徴的な使用法
– 溝掘り:水道管やガス管を埋設するための細長い溝を掘る作業には、バックホーが最適です。
– 精密な掘削:狭い場所や正確な深さが必要な掘削作業には、バックホーという呼び名がよく使われます。
– 植樹の穴掘り:公園や街路樹の植樹のための穴掘りにも、バックホーが使われます。
ショベルカーの一般的な使用例
– 一般的な土木工事:道路工事や河川工事など、幅広い土木作業で活躍するため、一般的な呼び名であるショベルカーがよく使われます。
– 解体作業:古い建物を壊す際にも、ショベルカーという呼び名でよく知られています。
– 災害復旧:地震や水害の後の復旧作業でも、ショベルカーは欠かせません。
多彩なアタッチメント
油圧ショベルの魅力の一つは、その多機能性にあります。
アームの先端に取り付けるアタッチメントを変えることで、様々な作業に対応できるのです。
バケット
最も一般的なアタッチメントで、土を掘ったり、すくったりするのに使います。
形状や大きさも様々で、作業内容に応じて選べます。
ブレーカー
コンクリートや岩盤を砕くためのアタッチメントです。
ハンマーのような形状で、強い衝撃を与えて硬い物質を破壊します。
フォーク
パレットや大きな物体を持ち上げるためのアタッチメントです。
フォークリフトのような働きをします。
掴み具
がれきや木材などをつかむためのアタッチメントです。
解体現場や林業での活用が多いです。
これらのアタッチメントを使いこなすことで、1台の油圧ショベルが多彩な作業をこなすことができるのです。
油圧ショベルの進化と現代の建設現場
小型化と精密作業
技術の進歩により、油圧ショベルはますます多機能になってきました。
特に注目されているのが、小型油圧ショベルの発展です。
小型の油圧ショベルは、狭い場所での作業や、繊細な作業に適しています。
例えば、都市部の狭い現場や、既存の建物の周りでの作業など、大型の機械では入れないような場所でも活躍します。
また、GPSやセンサー技術の発達により、非常に精密な掘削作業が可能になりました。
これにより、人間の手作業では難しかったような複雑な地形の造成や、正確な深さの掘削などが可能になっています。
環境への配慮
現代の建設現場では、環境への配慮も重要なテーマとなっています。
そのため、油圧ショベルも環境に優しい方向へと進化を遂げています。
例えば、電動式の油圧ショベルの開発が進んでいます。
これにより、従来のディーゼルエンジンを使用した機械に比べ、排気ガスの削減や騒音の低減が可能になります。
特に、屋内作業や夜間作業など、環境への配慮が必要な場面で重宝されています。
また、燃費の改善や、作業効率の向上による省エネルギー化も進んでいます。
これらの取り組みにより、建設業界全体の環境負荷低減に貢献しています。
油圧ショベルを操る技術と資格
操作の難しさと魅力
油圧ショベルの操作は、一見簡単そうに見えて、実はかなりの技術を要します。
大きな機械を自在に操り、精密な作業を行うには、豊富な経験と高度な技術が必要です。
特に難しいのが、バケットの動きをコントロールすることです。
土を掘る際の角度や力加減、物を持ち上げる際のバランスなど、オペレーターには繊細な感覚が求められます。
しかし、この難しさが逆に油圧ショベル操作の魅力にもなっています。
熟練のオペレーターが見せる、まるで機械が自分の体の一部であるかのような操作は、見ていて感動すら覚えるほどです。
必要な資格と取得方法
油圧ショベルを操作するには、専門の資格が必要です。
主な資格には以下のようなものがあります。
車両系建設機械運転技能講習
最も基本的な資格で、3トン以上の油圧ショベルを操作するために必要です。
講習は学科と実技からなり、通常5日間程度で取得できます。
小型車両系建設機械特別教育
3トン未満の小型油圧ショベルを操作するための資格です。
こちらは比較的短期間で取得可能で、通常1〜2日程度の講習で済みます。
解体用機械運転技能講習
建物の解体作業に特化した資格です。
通常の油圧ショベル操作に加え、解体作業特有の知識や技術が求められます。
これらの資格を取得することで、建設業界での活躍の場が広がります。
また、資格取得後も継続的な訓練や経験の積み重ねが、より高度な操作技術の習得につながります。
まとめ:多様な呼び名が示す油圧ショベルの魅力
ここまで、「ショベルカー」「パワーショベル」「ユンボ」「バックホー」といった様々な呼び名を持つ油圧ショベルについて、詳しく見てきました。
これらの多様な呼び名は、油圧ショベルが建設業界で果たす重要な役割と、その多機能性を反映しています。
土を掘る、物を持ち上げる、がれきを撤去する、コンクリートを砕く…。
様々な作業をこなす油圧ショベルは、まさに建設現場の万能選手と言えるでしょう。
また、技術の進歩とともに、油圧ショベルはますます進化を続けています。
小型化による作業範囲の拡大、精密な制御技術の導入、環境に配慮した電動化など、その進化は留まるところを知りません。
油圧ショベルを操るオペレーターの技術も、機械の進化とともに高度化しています。
資格取得はその第一歩に過ぎず、実際の現場での経験を積み重ねることで、真の熟練オペレーターへと成長していきます。
建設現場で働く人々、そして私たちの生活を支える重要な機械、油圧ショベル。
その多様な呼び名の裏には、長い歴史と技術の進歩、そして人々の工夫が詰まっているのでしょうね。